最近、米国で急速に広がっている営業手法「ソーシャルセリング」をご存じでしょうか?これは、SNSを通じて見込み客と信頼関係を築き、従来の飛び込み営業やテレアポとは異なるアプローチで成約へとつなげる、新しい営業スタイルです。特にBtoBビジネスにおいて高い効果を発揮し、情報収集が主にWEB上で行われる現代において、その重要性がますます高まっています。
本記事では、ソーシャルセリングの基本的な仕組みやそのメリット、そして導入による効果を初心者向けにわかりやすく解説します。効率的に営業成果を上げたい方、ぜひご一読ください。

目次
営業の世界で注目を集める「ソーシャルセリング」
ソーシャルセリングは、SNSを活用して見込み客と信頼関係を築き販売につなげる新しい営業手法です。従来のテレアポや飛び込み営業といったアウトバウンド営業とは異なり、ソーシャルセリングでは、見込み客に情報を提供したり、SNS上で継続的にコミュニケーションを取ることで、より自然な形で商談を進めることが可能です。
ソーシャルセリングの特徴は主に以下の3つです。
見込み客への効果的なアプローチ
ソーシャルセリングでは、見込み客がSNSで情報を探しているタイミングで、自社の解決策や価値を提供できます。見込み客が自ら課題を認識した際に、最初に思い浮かべてもらえる存在となることが目指すべきゴールです。
信頼関係の構築が鍵
ソーシャルセリングは、営業活動を行う前に見込み客との信頼関係を構築することが重要です。日々SNSで役立つ情報を発信し、見込み客の投稿にリアクションをすることで、次第に見込み客との関係が深まります。このプロセスを通じて、商談が始まる時点ではすでに信頼が築かれているため、成約率が向上しやすくなります。また、日常的にコミュニケーションを取ることで、競合他社よりも早く課題解決の提案をすることができるため価格競争を避けることも可能です。
リードタイムの短縮
従来の営業手法と異なり、ソーシャルセリングでは営業担当者と見込み客が事前にお互いを知っている状態で商談が始まるため、信頼構築に要する時間が大幅に短縮されます。これにより、商談から成約までのリードタイムが短くなり、営業プロセスが効率化されます。
従来のアウトバウンド営業との比較
ソーシャルセリングは、これまでの営業手法とどのように異なるのでしょうか?従来の営業手法と比較することで、その特徴とメリットを明確に理解できます。
テレアポ(テレフォンアポインティング)
手法
テレアポは、事前に準備した企業リストを基に電話をかけアポイントを取得し、アプローチする方法です。
メリット
テレアポは比較的手軽に始めることが可能で、対話を通じて即座に反応を得られるため、迅速にアポイントメントを設定できます。
デメリット
見込み客が興味を持つ前に架電するため、拒否されやすく、受注率が低くなる傾向があります。
飛び込み営業
手法
事前にコンタクトを取らず、直接顧客のオフィスや店舗を訪問してアプローチを行う手法です。
メリット
対面での接触により、第一印象を強く残すことができます。また、個別に対応するため、柔軟に商談を進めることが可能です。
デメリット
突然の訪問は相手に負担をかける可能性が高く、非効率である場合が多いです。また、訪問のコストが高く、地域や時間に制約があります。
リファラル
手法
パートナー企業や既存顧客からの紹介に基づいてアプローチを行う手法です。
メリット
紹介された顧客は信頼度が高く、成約率が向上しやすい傾向があります。また、顧客が自然に紹介してくれるため、営業コストが低いこともメリットの一つです。
デメリット
紹介がないと営業が進まないため、商談数が安定しない点が挙げられます。
ソーシャルセリング
手法
SNSを通じて見込み客へアプローチし、日常的にコミュニケーションを行うことで、最終的に成約を獲得する営業手法です。
メリット
日々のコミュニケーションを通じて、見込み客との関係性を深めることができる点です。これにより、商談に繋がる可能性が高まり、結果として成約率の向上が期待できます。また、営業のハードルが低く、ソフトなアプローチができることもメリットの一つです。
デメリット
時間をかけて信頼関係を構築するため、アプローチ開始から成果創出まで長期間に及ぶ場合が多くなります。
このように、これらの営業手法はそれぞれの強み・弱みがあり、ターゲットのニーズやビジネス状況に応じて使い分けたり組み合わせたりして、自社や顧客に合った営業手法を選択をすることが重要です。
なぜソーシャルセリングが重要なのか?
デジタル技術が急速に進化し、消費者の購買行動が大きく変化した現代、B2B営業活動において従来の営業手法だけでは対応しきれない状況が進行しています。顧客がオンラインで情報を収集し、自ら意思決定を進める中で、営業担当者が顧客の購買プロセスに早期に関与し、信頼を築く必要性が増した今だからこそ、ソーシャリセリングを取り入れることが重要です。SNSを通じて従来の手法では到達できなかったリードを効果的に獲得し、実際の営業成果を向上させる手法としてソーシャルセリングは重要視されています。
ソーシャルセリングの普及状況
グローバルの観点
グローバル市場ではソーシャルセリングは急速に普及しており、特にB2B分野でその効果が実証されています。LinkedInを中心に、営業担当者がターゲット企業の意思決定者と直接つながり、関連性の高いコンテンツや専門知識を提供することで、商談の初期段階から強力な関係を築いています。
アメリカやヨーロッパの企業では、ソーシャルセリングの導入が標準的な営業プロセスの一部となりつつあり、SalesforceやHubSpotといったCRMツールと連携させ、リード育成の効率化やコンバージョン率の向上を実現しています。
日本におけるソーシャルセリングの実態
日本ではソーシャルセリングの普及はグローバルに比べてやや遅れている傾向にあります。従来のテレアポや飛び込み営業、フォーム営業といった手法がまだ主流であり、特に大企業では保守的な営業スタイルが根強く残っています。
しかし近年、デジタルシフトやリモートワークの増加に伴い、ソーシャルセリングの重要性が徐々に認識され始めています。特に、LinkedInやFacebookを活用した営業活動が徐々に浸透し、先進的な企業を中心にソーシャルセリングを積極的に採用する動きが見られるようになっています。
ソーシャルセリングの成功事例
ソーシャルセリングの導入によって、ビジネスの成長や営業活動の効率化が実現されることが多くの企業で証明されています。以下に、その実際の成功事例を簡単にご紹介します。
IBM(アメリカ)
背景
IBMは、長年にわたりコンピュータ業界の先駆者として、様々な技術革新を実現してきました。しかし、クラウドコンピューティングやデータセキュリティなどのウェブベースのサービスを販売する際に、従来のテレマーケティングやメールが期待した成果を上げられなくなりました。IBMの調査によると、B2Bバイヤーの多くがソーシャルメディアを活用して製品情報を収集しており、今後の購買決定にもソーシャルメディアを使用する可能性が高いとされています。
戦略
IBMはソーシャルメディアを活用した新たな販売戦略を導入しました。具体的には、以下のステップを踏みました。
ターゲット設定
Cloud Computing部門を最初の対象として選定
フレームワークの構築
ソーシャルメディアアカウント(TwitterとLinkedIn)を担当者に提供し、関連するコンテンツを集めたソーシャルマーケティングカレンダーを作成
インテリジェントリスニング
ソーシャルメディアでの会話をモニタリングし、トレンドや問題を把握
カスタマイズ
担当者がソーシャルメディアの投稿を編集できるようにし、会話に合わせたコンテンツを提供
成功のためのポイント
コンテンツとカスタマイズ
豊富なコンテンツと、担当者が直接編集できる機能を提供することで、よりパーソナライズされたメッセージングが可能に
「インテリジェントリスニング」
ソーシャルメディアでの会話を積極的に監視し、ユーザーの関心やニーズを把握
担当者のブランド化
担当者の個別ページやビデオコンテンツを作成し、パーソナルなタッチを追加
成果
フォロワーの増加
試行段階で、7人の担当者のLinkedInフォロワーは535人から3,500人に増加し、リーチは54,000から130万人に拡大
ソーシャルメディアの活動量
全1,700人のインサイドセールスチームが5万人以上のLinkedIn接続を持ち、20,000件のツイートを投稿
エンゲージメントの向上
担当者のページには100,000件の訪問があり、動画チャットなどの機能が活用
売上の増加
ソーシャルメディア専用の無料トライアルオファーでは、初日だけで10件の注文を獲得し、四半期中の売上が前年の4倍に増加
SAP(ドイツ)
背景
SAPは長年にわたり販売活動のリーダーであり続けてきました。しかし、競争が激化する中で販売方法を改善する必要がありました。特に、販売チーム全体に効果的な行動と実践を浸透させることが課題となっていました。
戦略
SAPはLinkedIn Sales Navigatorをデジタル販売プラットフォームとして採用し、そのツールを最大限に活用するための取り組みを行いました。主な戦略としては以下の3つが挙げられます。
「Train the Trainer」プログラム
グローバルな企業において販売スタッフをスケーラブルにトレーニングするためのプログラムを導入。これにより、成功したデジタル販売行動を認識し、効果的にコミュニケーションするための専門家を育成
パーソナルブランドの構築
カスタマー中心のプロフィールを作成し、ターゲットオーディエンスについてリアルタイムでの洞察を得るためのアラート設定を実施。
生産的な会話の促進
真の信頼関係を構築するために、ターゲットとの積極的なコミュニケーションを奨励
成功のためのポイント
強力なパーソナルブランド
顧客中心のプロフィールを作成し、信頼性と影響力を向上
リアルタイムのインサイト
ターゲットオーディエンスについての即時の洞察を得ることで、タイムリーかつ効果的なアプローチが可能に
積極的な関与
生産的な会話を通じて、ターゲットとの信頼できる関係を構築
成果
取引の増加
Sales Navigatorを利用した結果、取引の成立数が3.6倍に増加
パフォーマンスの向上
デジタル販売行動を採用した営業担当者は、クォータの達成率が1.3倍向上し、販売パフォーマンスが55%向上
ネットワークの成長
SAPのネットワークの全体的な規模が前年比20%増加
DreamData(デンマーク)
背景
DreamdataはLinkedInを活用してソーシャルセリングを試み、需要の加速という成果を報告しています。初期の試みでは、特に目立った成果が見られず、活動は停滞していました。しかし、成功事例が生まれたことで、戦略が徐々に洗練されていきました。
戦略
DreamDataのAE、Laura Erdemがカスタマージャーニーに関する投稿を行い、これが急速に拡散。結果として、以下の効果が得られました。
投稿が約40,000ビュー
Dreamdataのウェブサイトに過去最高の訪問者数
MQLs(Marketing Qualified Leads)が最多
この成功を受けて、Dreamdataは全社員にLinkedInでの頻繁な投稿を奨励。300,000ビュー達成を目標にし、最終的には520,000ビューを達成しました。
成功のためのポイント
品質重視のストーリーテリング
投稿は質の高いストーリーで構成
自然体での執筆
友人に話すように投稿
頻繁な投稿
週に複数回投稿
シンプルさ
投稿作成に15分以上かけない
内容の多様性
例えば、Lauraは動画が得意、他のメンバーはミームなどを使用
幅広い内容を投稿
製品に関する投稿ばかりでなく幅広い内容を投稿
相互のモチベーション
チーム全体での支援と励まし
LinkedIn内で完結
外部リンクは少なめに
成果
ブランド認知度の向上
チームの投稿が520,000ビューに達し、ブランド信頼度が向上。Dreamdataの顧客が契約前に37回以上のウェブサイトセッションを実施。
ウェブサイトトラフィックの増加
成功した投稿がウェブサイト訪問者数を増加させ、リードの生成に寄与LinkedIn経由のMQLsが3倍に、ダイレクトMQLsが2倍に増加。
アウトバウンドアカウントの活性化
過去に反応がなかったアカウントが再度関心を示すように。
メディア出演
投稿活動が評価され、ポッドキャストやビデオショーに招待されるようになった。
まとめ
ソーシャルセリングは、SNSを駆使して見込み客との関係を築き、商談を効率的に進める新しい営業手法です。成功事例からは、信頼関係の構築、パーソナルブランドの強化、質の高いコンテンツの発信などが重要な成功要因であることがわかります。これらの事例を参考に、自社の営業活動にソーシャルセリングを取り入れることで、より効果的な成果を上げることができるでしょう。
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